2017年12月に読んだ本

・日付は読み終えた日

・購入(本or電子)、図書館含む

 

12/1

その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく)

その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく)

 

「回復とは回復し続ける ことである」

変化の中に身を置くことが回復を基礎づける。

 

12/3

驚きの介護民俗学 (シリーズ ケアをひらく)

驚きの介護民俗学 (シリーズ ケアをひらく)

 

 面白かった。宮本常一を読みたくなる。

 

12/5

どうせ死んでしまう・・・・・・私は哲学病 (私は哲学病。)

どうせ死んでしまう・・・・・・私は哲学病 (私は哲学病。)

 

生活エッセイ、時間論、半隠遁について。けっこう幅広い。

日本精神史(上)

日本精神史(上)

 

 「地獄の思想」:梅原猛 を思い出した。日本の古典をちゃんと読みたくなる一冊。

 

 12/6

最貧困女子 (幻冬舎新書)

最貧困女子 (幻冬舎新書)

 

 作者の迸る正義感のみが、この過酷な現実描写を読み進められる僅かな希望であった。

 12/8

イスラームから世界を見る (ちくまプリマー新書)

イスラームから世界を見る (ちくまプリマー新書)

 

 9・11からアラブの春あたりまでの世界情勢をイスラーム的視点で語る。

 

12/9 

イスラーム思想を読みとく (ちくま新書)

イスラーム思想を読みとく (ちくま新書)

 

 イスラーム世界の思想潮流の図式がわかりやすく、本書を読むことでその豊かな世界の入口にすっと立つことができたと感じた。

 

12/10

惜しむらくは読ませたい対象者が見えないこと。老人は激怒し、若者は犯罪者側に感化してしまう可能性がある魅力的で情緒的物語的な語り口。老人喰い詐欺の撲滅がいかに困難かと合わせて、この問題の「語り口の困難さ」についても考えてしまった。

 12/15

神、人を喰う―人身御供の民俗学

神、人を喰う―人身御供の民俗学

 

「驚きの介護民俗学」が面白かったから本書をチョイス。

 

 中世から近代まで、知識人から一般庶民まで、『それに触れることによって必然的に生じるはずの恐ろしさおぞましさといった負の感情を昇華して、当たり障りのない題材に仕立て上げる「毒抜き」の議論』(p15) に陥ってしまう「人身御供」は、どのように語られ、伝えられてきたのか。そこにある「毒」から目を逸らさずいかに想像力を巡らすことができるか、『本書全体が、そうしたジレンマを克服するための試論ということになるだろう。』(p20)

 

カントと物自体 (叢書・ウニベルシタス (58))

カントと物自体 (叢書・ウニベルシタス (58))

 

 「物自体」批判に対する批判書。「物自体」がいかにカント思想の基底を成しているかを一生懸命述べている、くらいしか汲み取れませんでした・・。

 

12/18

感染地図―歴史を変えた未知の病原体

感染地図―歴史を変えた未知の病原体

 

 

 


日曜の朝、ソーホーの街路は奇妙な静寂に包まれていた。〜過去二四時間で七十人が死に、数百人がいままさに死の淵をさまよっていた。(p67)

 

19世紀のロンドン。急速な都市化に伴う人工の密集、家の高さほどに積み上がった糞便、水洗便器の普及が川への排泄物放流を増加させ、その川の水を直接的もしくは間接的に庶民が利用していた。

さまざまな商いが猥雑に集う商店街と、どうやって寝ているのか不思議なほど狭い貸し部屋に住む大家族。上下水道が混じり合う不衛生な環境に酷暑。これらのあらゆる条件がコレラの爆発的な流行を引き起こし、その感染源をなんとか突き止めようと奔走するとある医師と牧師。


戦争や革命など歴史上の重大事件というものはたいてい、それに参加している人自身に歴史的な瞬間にいることを自覚させている。〜だが疫病は、ボトムアップ型の歴史を作る。世界を変える大事件であっても、それに参加しているのは大半がありふれた人で、自分の行動が後世まで記録されるなど露ほども考えることなくお決まりの日常を過ごしている。(p42)

 そんなあらすじです。面白かった〜。

 

12/20

魅了されたニューロン: 脳と音楽をめぐる対話

魅了されたニューロン: 脳と音楽をめぐる対話

 

 p77〜の、「科学における進歩(プログレス)、音楽における変革(イノヴェーション)がという小見出しがとてもキャッチー。科学的な個別的事象に行きがちなシャンジューに対し、実際的なフレーズ、一定の和音と同時に鳴らされる旋律、多様な現実の“音楽”を科学的に観察しなければいけないと諌めるブーレーズ

 

 12/21

蟹工船

蟹工船

 

「アカになること」への、プロレタリアートにとっての魅力と資本家にとっての恐怖がどのような現場感覚によって醸成されていたかを、時代を隔てた現在において体感するためにはこういった文学の力が必要だなあとしみじみ思う。

12/25

 

イスラムの怒り (集英社新書 493A)

イスラムの怒り (集英社新書 493A)

 

「このような事件が起きると、いつでも、自分のように(暴力的に)反応した者が罰せられる。だが、悪意の挑発をした者は罰せられない。それは不公平だ。挑発した側も罰せられるべきではないか」p26

2006年サッカーW杯で頭突きをしたジダンの至極真っ当な言葉。そこから世界は何も学ぶことができなかった。

 

それとは別に、著者の興味深い仮説。

無茶な車の運転をするムスリムが多いことから、

結論として、ムスリムは、私たちや西欧人に比べて、「因果律」というものを信じていないのではないか、と考えるに至った。p206

ムスリムのさまざまな日常生活においても、(西欧社会と比べて)神の絶対性の基盤が確固としてある故、科学的根拠を理解はできても行動には伴うまでには至らない。そういう風に見えるそうです。ほうほう。

 

12/28

 

愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎 (集英社新書ヴィジュアル版)

愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎 (集英社新書ヴィジュアル版)

 

 蒐集における人間欲求の無際限さと多様性がカラー写真で楽しめる。みんなワニの剥製すきだなー。

12/30

 

自由の哲学者カント?カント哲学入門「連続講義」?

自由の哲学者カント?カント哲学入門「連続講義」?

 

 カントの「自由」が、どのような批判のもと成り立っているのかを横断的につかむ入門書として読みやすかった。この「自由」ってなんかイスラーム法が適切に運用された世界に通じるのでは?と唐突に思う。

 

12/31

クルアーンを読む (atプラス叢書13)

クルアーンを読む (atプラス叢書13)

 

 ところがこの本で一瞬語られたのは、カリフ制成立時の世界とカントの世界連合という普遍主義が似てるってことでした。

それは置いておいても、

クルアーンは例えばキリスト教の聖書とは違って、神の言葉がダイレクトに書かれたものであるがゆえ、その内容や文字一字一句にすら聖性が宿っている、とか

カリフ制再興によるイスラーム圏での普遍主義の成立が、ナショナリズムを煽るだけの西洋文明の行き詰まりにポジティブフィードバックするのではないか、

等々。おもしろかった。